
「ブランディングって、何をすればいいんですか?」
ホームページやパンフレットのご相談をいただくなかで、たまに聞かれる質問です。
私たちの答えは、こうです。ブランディングとは、お客様の頭の中に「その会社らしい、お客様との約束」を積み上げていくことです。そして、その積み上げをいちばん多く担っているのは、ロゴでもWebサイトでもなく、社員一人ひとりの日々の行動です。
だからこそデザイン会社である私たちは、人事評価制度づくりまで手がけています。一見遠いように見えるこの2つが、なぜつながっているのか?この記事では、その理由をお話しします。
デザインの仕事は、多くの場合「つくって終わる」
ブランディングを段階に分けると、おおむね次のような流れになります。
- 見つける:会社の歴史や経営者の想い、お客様の声からその会社らしさを探す
- 決める:会社の存在意義や大切にすることを、一つの方向にまとめる
- 伝え方をつくる:言葉、デザイン、Webサイトなどの表現にする
- 接点に載せる:営業資料、名刺、看板、SNSなどに展開する
- 積み重ねる:日々の仕事を通じて、同じ印象を何度もお客様に届け続ける
デザイン会社の仕事は、ほとんどが4までです。4までは「形」が残り、納品できるからです。
ところが、ブランドが本当に育つかどうかは5で決まります。ブランドは、一発のすごいクリエイティブでできるものではありません。同じ意味を何度も何度も届けて、ようやく相手の頭の中に残るものです。
では、5の「積み重ねる」を担っているのは誰でしょうか?納品したWebサイトでも、広告でもありません。その会社で働く社員です。
ブランドをつくっているのは、社員の「いつもの行動」
お客様が会社に触れる場面を思い浮かべてみてください。電話の取り次ぎ、見積もりの出し方、現場でのあいさつ、納品後のフォロー。そのほとんどで、お客様の前にいるのは社長ではなく社員です。
社長としては、「そんな当たり前のこと?」と思うかもしれませんが、その当たり前、原理原則が明確にされていて、社員たちは常にクリアしているでしょうか?
たとえば、Webサイトに「丁寧な対応が私たちの強みです」と書いたとします。ところが、問い合わせの電話に出た社員がそっけなかったら、お客様の頭に残るのは「丁寧な会社」ではありません。「書いてあることと違う会社」です。
ブランディングの本質をものすごく簡単に言うと、言っていることと、やっていることを一致させることにあります。そして「やっていること」の大半は、社員の日々の行動です。
ここで、1つ問いかけをさせてください。あなたの会社の社員は、「うちはどんな会社ですか?」と聞かれたとき、同じように答えられるでしょうか?
もし答えが人によってバラバラなら、お客様が受け取る印象もバラバラです。どれだけ美しいWebサイトをつくっても、同じ約束は積み重なりません。
評価基準は、会社のいちばん正直なメッセージ
では、社員の行動を揃えるものは何か。私たちの答えは、人事評価制度です。
人は、評価されることを繰り返します。これは社員の意識が低いからではなく、ごく自然なことです。会社が何を見て、何に報いているかは、朝礼で唱和する理念よりもずっと強く社員に伝わります。
たとえば、理念には「お客様に寄り添う」と書いてあるのに、実際の評価は売上と件数だけで決まっている会社があったとします。社員はどちらを信じるでしょうか?当然、評価のほうです。その結果、お客様が受け取る印象は「寄り添ってくれる会社」ではなく「売り込みが強い会社」になります。
つまり評価基準は、会社が社員に向けて発している、いちばん正直なメッセージです。そしてそのメッセージは、社員の行動を通じて、そのままお客様に届きます。
こう考えると、人事評価制度は給与を決めるための「査定の道具」ではありません。「うちはこういう会社だ」という約束を、毎日の行動として積み重ねるための仕組みです。私たちが人事評価制度を「インナーブランディングのエンジン(駆動の仕組み)」と考えるのは、このためです。
採用ブランディングも、同じことが起きている
同じことは、採用でも起きています。
採用サイトに「挑戦を応援する社風です」と書いて入社してもらったのに、実際は失敗が減点される評価になっていた。そういう会社では、新しく入った人ほど「話が違う」と感じて辞めていきます。
転職する人の理由を見ても、この傾向ははっきりしています。某リクルートサイトの転職理由ランキング(2024年7月〜2025年6月)では、「自分の成果が評価されない」が前年の18位から3位に上がっています。
採用サイトや求人原稿は、会社から求職者への約束です。そして評価制度は、その約束が本当かどうかを、入社後に社員が毎日確かめるものです。外に向けた言葉と、内側の評価が一致していて初めて、採用ブランディングは「定着」までつながります。
私たちが、評価制度づくりまで手がける理由
私たちは長く、会社の想いを「外」に伝えるデザインの仕事をしてきました。ご依頼の多くは「かっこよく作ってほしい」「おしゃれにしたい」というものです。
でも、社長のお話を伺ううちに、何度も同じ壁にぶつかりました。社長の語る想いと、社員の認識がズレているのです。そのまま素敵なWebサイトをつくっても、公開した瞬間がいちばん美しく、そこから少しずつ現実との差が開いていきます。
実は、私たち自身もそうでした。社員は一生懸命なのに、代表の考えと日々の仕事が噛み合わない。そこで会社の軸を言葉にし直し、その言葉を評価に結びつけました。今も社員と一緒に見直しを続けています。
「伝える」仕事を本当に意味のあるものにするには、「伝える中身」を社内でそろえるところまで踏み込む必要がある。それが、デザイン会社の私たちが人事評価制度づくりまで手がけるようになった理由です。
まとめ:ブランドは、評価の先に育つ
- ブランディングは、お客様の頭の中に「その会社らしい、お客様との約束」を積み重ねること
- 積み重ねているのは、ロゴやWebサイトよりも、社員の日々の行動
- 社員の行動を決めるのは、会社が何を評価しているか
だから、評価を変えることは、ブランドを変えることでもあります。ブランディングに取り組んだのに手応えがないと感じているなら、一度、自社の評価基準を見直してみてください。
最後にもう一度問いかけます。御社では、「お客様に伝えたいことと、社員が評価されていることは、一致しているでしょうか?」
よくある質問
ブランディングと人事評価制度は、どう関係していますか?
ブランドは社員の日々の行動で積み重なり、その行動は会社が何を評価するかで決まります。そのため、評価基準が会社の掲げる想いと一致しているかどうかが、ブランドの一貫性を左右します。
インナーブランディングは、何から始めればいいですか?
まず、会社が大切にしていることを、社長自身の言葉ではっきりさせることです。そのうえで、今の評価基準がその言葉と矛盾していないかを確かめます。
社員が少ない会社でも、意味がありますか?
あります。社員が少ないほど、一人ひとりの行動がそのまま会社の印象になります。また、人数が少ない今のほうが、試しながら整えやすい時期です。
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