
── “見た目の話”で終わらせず、社長の判断をラクにする考え方
「デザイン経営」と聞くと、ロゴやWebサイトの刷新を思い浮かべる方も多いかもしれません。
ただ、現場の社長にとって本当に重要なのは、「きれいにすること」ではなく、次のような悩みを少しでも減らせるかどうかではないでしょうか。
- 差別化したいが、何を強みにすべきか言語化できない
- 営業や採用が属人化し、再現性がない
- 値引き以外の戦い方を作りたい
- 社員の判断がバラバラで、手戻りが増える
本記事では、デザイン経営を「社長の判断を整理する道具」として捉え直し、
何から着手すれば良いかまで、現実的な手順でお伝えします。
デザイン経営とは何か?
── 国が示した“経営手法”としてのデザイン
デザイン経営は、2018年に経済産業省と特許庁が提唱した考え方で、デザインの力をブランド構築やイノベーションに活用する経営手法です。
ここで言う「デザイン」は、見た目を整えることだけを指しません。
むしろ本質は、社長や組織の意思決定の中心に「お客様視点」を据えることです。
- 自社の都合や慣習から出発するのではなく、
- お客様が実際に困っていること、迷っていること、比較していることから出発し
- 商品、営業、採用、組織運営まで“体験”としてつながるように整える
これがデザイン経営の核です。
言い換えるなら、「会社の考え方と見せ方と動き方を、矛盾なく揃える」取り組みです。
なぜ今、中小企業にこそ必要なのか
── “大企業の余裕”ではなく“中小企業の現実”に効くから
1)機能や価格の差が縮まり、選ばれる理由が見えにくい
同じような商品やサービスが増え、比較されやすくなりました。
この環境では、少しの機能差よりも、
- この会社は信頼できそうか
- 話が通じそうか
- 頼んだ後の不安が少なそうか
といった“取引前の体験”が意思決定を左右します。
デザイン経営は、まさにこの領域を整える考え方です。
2)属人化が進むほど、社長の負担が増える
中小企業は、強みが社長や一部の人に集中しがちです。
それ自体は悪いことではありませんが、属人化が進むほど、
- 判断が社長待ちになる
- 品質が人によってブレる
- 採用しても育たない
- 良い取り組みが続かない
という状態になり、社長の時間が削られます。
デザイン経営は、顧客視点を“共通言語”にして、判断の基準を揃えることで、属人性を下げやすくします。
デザイン経営がもたらすメリット
── ただし、ここで言うメリットは「売上が上がる」より先に起きる変化
1)新しいアイデアが出るのは、「才能」より「問いの立て方」
デザイン経営の出発点は「何を売るか」ではなく、「お客様はどこで困っているか」です。
この問いを持つだけで、打ち手は変わります。
例えば、アップルのような大企業の事例は、そのまま真似できません。
ただ、学べるのは規模ではなく、「お客様との接点全体を一つの体験として設計している」点です。
中小企業でも、問い合わせ対応、見積、納品、アフターフォローを“体験”として整えるだけで差は出ます。
2)お客様の満足は「機能」より「不安が消える設計」で上がる
お客様が嬉しいのは、機能の多さだけではありません。
「迷わない」「不安が少ない」「話が早い」ことが、満足に直結します。
分かりやすい導線、説明の一貫性、対応品質の平準化。
こうした“地味だが効く”設計は、中小企業の強い武器になります。
3)ブランドは「広告」ではなく「判断の一貫性」で強くなる
ブランドとは、ロゴやキャッチコピー以上に、
- 何を約束し、何を約束しないか
- どんな顧客に、どんな価値を届けるのか
- 品質や対応の基準をどこに置くか
この判断がブレない状態のことです。
デザイン経営は、その一貫性を作るための“整備”です。
4)社員のやる気以前に、「判断が揃う」ことで手戻りが減る
社長が望むのは、精神論ではなく実務の改善のはずです。
デザイン経営は、社員のモチベーション施策というより、
- 判断基準が揃う
- 手戻りが減る
- 説明が短くなる
- 社長確認が減る
といった、社長の負担を軽くする方向に効きます。
実践するなら「大掛かりにやらない」が正解
── 最初の一歩は、組織改革ではなく“判断基準の整備”から
ステップ1:社長が「誰に、何を約束する会社か」を一枚で言える状態にする
まず必要なのは、立派な理念ではなく、経営判断に使える言葉です。
- 主な顧客は誰か(業種・規模・困りごと)
- 自社が強い場面はどこか(成果ではなく、提供価値)
- 他社と違うのは何か(機能ではなく、体験)
これが曖昧だと、営業も採用もWebもすべてが散らかります。
ステップ2:顧客接点を“体験”として棚卸しする
次に、問い合わせ前から取引後までを、社長目線ではなく顧客目線で見直します。
- どこで不安が生まれるか
- どこで迷うか
- どこで比較されるか
- どこで「この会社にしよう」と決まるか
ここが見えると、改善の優先順位が自然に決まります。
ステップ3:社内の判断基準を2~3個に絞って共有する
「全部やる」は続きません。
最初は、社内で迷いがちな基準を2~3個に絞って統一するのが現実的です。
例えば、
- 提案は“顧客の判断が進む”ことを最優先する
- 説明は“誰が見ても同じ理解になる”形にする
- 仕上げより“手戻りが出ない設計”を優先する
小さく始めて、回る形にしてから広げる。これが中小企業の勝ち筋です。
経営者が次に考えるべき視点
── デザイン経営は「やるべき施策」ではなく「判断の質を上げる仕組み」
デザイン経営は、デザイン部門を作ることでも、Webを刷新することでもありません。
社長の判断が、顧客視点で一貫し、組織に伝播する状態を作ることです。
もし今、
- 打ち手が増えるほどバラバラになる
- 人が増えても社長がラクにならない
- 値引き圧力が強く、利益が残りにくい
と感じているなら、問題は「努力不足」ではなく、判断基準が未整備である可能性が高いです。
まずは、
「誰に、何を約束する会社か」
「お客様体験のどこを整えるべきか」
この2点を、社長の言葉で短く言える状態にすることから始めてください。
デザイン経営は、そのための実務的な枠組みです。
まとめ
これからますます厳しくなる日本経済の中で、デザイン経営は中小企業にとって、とても重要な経営手法となります。
経営の中心にデザインを据えることで新しいアイデアを生み出し、ブランドを強くし、お客様の満足と従業員のやる気を高め、結果的に企業が長く成長する土台を作ります。
デザイン経営の導入を考えている企業は、まず経営陣の強いリーダーシップから企業全体へ浸透させ、継続的な改善と成長を目指すことが求められます。
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株式会社ハーモナイズ
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